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東京地方裁判所 昭和50年(借チ)2066号 決定 1976年7月13日

甲事件申立人、乙事件相手方(以下単に申立人という)

宮島静

右代理人

平岩新吾

甲事件相手方、乙事件申立人(以下単に相手方という)

秋元稔

右代理人

田中宗雄

外一名

主文

一  申立人から相手方に対し別紙目録二記載の土地賃借権及び同目録三記載の建物を代金一、〇六二万円で売渡すことを命ずる。

二  申立人は相手方に対し、相手方から前項の代金一、〇六二万円の支払を受けるのと引換えに、前項の建物につき所有権移転登記手続をなし、かつ、右建物を明渡せ。

三  相手方は申立人に対し、申立人から前項の所有権移転登記手続及び建物明渡を受けるのと引換えに、第一項の代金一、〇六二万円を支払え。

理由

(甲事件申立の要旨)

申立人は相手方所有の別紙目録一記載の土地(以下本件土地という)につき、同目録二記載の賃借権を有し、同地上に同目録三記載の建物(以下本件建物という)を所有している。

申立人は右建物及び土地賃借権を東京都世田谷区池尻三丁目三〇番の五、ニユー池尻マンシヨン九〇五号森義治に譲渡する予定であるが、右譲渡によつて相手方が不利になるおそれがないにもかゝわらず、相手方は右賃借権譲渡につき承諾を与えない。

よつて、右賃借権の譲渡につき、相手方の承諾に代る許可の裁判を求める。

(乙事件申立の要旨)

相手方は本件建物及び土地賃借権を自ら譲受けたいので、その旨の裁判を求める。

(当裁判所の判断)

本件の資料によれば、申立人からの土地賃借権譲渡許可申立(甲事件)及び相手方からの建物並びに土地賃借権譲受申立(乙事件)は、いずれも適法と認められるので、借地法第九条の二第三項の規定により、本件建物及び土地賃借権の対価を定めて、申立人から相手方への譲渡を命ずることとする。

鑑定委員会は、本件土地の更地価格を一、七四九万三、〇〇〇円(一平方メートル当り一二万六、六三五円)、借地権価格をその七〇パーセントに当る一、二二四万五、〇〇〇円と認め、右金額から申立人が右借地権を第三者に譲渡する際に譲渡価格の五パーセントを土地所有者に還元する用意がある旨を申立てていることを勘案して、右割合額を差引いた残額一、一六三万二、〇〇〇円と本件建物の価格一三万円を合算した一、一七六万二、〇〇〇円をもつて相手方が本件建物及び土地賃借権を譲受ける場合の対価とするのが相当である旨の意見書を提出した。

然しながら、右意見書は本件土地の更地価格につき、本件土地の表通りよりの長さは約二〇メートルであることを前提として、右奥行距離2.7メートルで除した商を相続税財産評価基準に従い、七以上八未満とし、奥行長大補正率を0.95と算出しているが、本件資料によれば、右奥行は26.5メートルであることが認められるから、これを基準として、右相続税財産評価基準により、奥行長大補正率を算出するとすれば、右補正率は0.90となる。よつて、これに右評価基準による間口狭少補正率0.86を乗じた数値をもつて、右意見書の本件土地の個別格差修正前の一平方メートル当りの価格一五万五、〇〇〇円に乗ずれば、本件土地の一平方メートル当りの価格は一一万九、九七〇円となり、従つてこれに本件土地の面積138.84平方メートルを乗ずれば、一、六六五万六、六三四円となり、これに右意見書の借地権割合七〇パーセントを乗ずれば一、一六五万九六四四円となる。

而して、当裁判所は本件記録に現われた一切の事情及び従来の裁判例により、右一、一六五万九、六四四円より賃借人が右借地権を買取る場合の名義書替料一〇%を減じた額一、〇四九万円(万円未満切捨)に右意見書による本件建物の価格一三万円を合算した一、〇六二万円をもつて、本件譲渡の対価と定めるのを相当とする。

本件の場合、譲渡対価の支払と建物所有権移転登記手続義務及び建物明渡義務とを同時履行の関係とするのが相当である。

以上の理由により主文のとおり決定する。 (中島恒)

<目録省略>

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